また、食事が進む中で、気まずい思いをする瞬間がありました。
彼は私達に、「トインビー博士は別れ際に、私にどんな戒めの言葉を与えてくれたとおもいますか?」と質問してきました。
考え抜いたあげく、夫が少しヤケ気味に「貪欲(どんよく)であってはならない、ということでしょう」と答えてしまいました。
すると池田氏の大きな顔は、氷のように冷たい表情に一変したのです。あたかも武士達でも召集して、私達を外へ引っ張り出すのではないか、とすら思えました。
私は慌(あわ)てて、夫のピーターが言おうとしたのは、例の対談でも、しばしば触れている“人間を支配する利己主義のことについて”のことだ、と説明しました。
彼は完全に気を落ちつかせてはいない様子でしたが、その場はそれで過ぎました。