明かされた日本招待の目的“対談集”続編の出版狙う


 彼は、次第に祖父の思い出話とロンドンでの会談に話を向けました。
 私には、この、小さな太った体つきの、権力の塊(かたまり)のような男が、ガチャガチャと音のするエレベータに乗って、祖父の薄暗い、ガランとしたアパートの部屋を訪ねた、などということは、思いも及ばないことでした。
 彼には、どんな食べ物が出されたのでしょうか。祖父のところでは、ハムを薄く切ったものとレタスの葉が日常の食べ物でした。
 「彼(※トインビー博士)はじつに偉大な方でした。」
 池田氏は、私の方へ身を乗り出したままの姿勢でそう言い、私をジッと見ました。
 「世界でもっとも偉大な学者です」とも言いました。
 私は、こうしたコメントが、どこか、よその家族に関する見当違いの話ではないか、との考えが頭をよぎりましたが、すぐに心の奥にたたみ込みました。
 「私の使命は、彼の作品を全世界の人に読んでもらうようにすることです。そのために、あなたも協力してくれるでしょうね」と言われ、私は「ノー」とは言えませんでした。
 「約束しますね? 約束してくれますね?」と言われ、彼が私に何を期待しているのか、不安に思いました。
 「そこで突然、彼は“トインビー・池田会談で、まだ出版されていない部分があり、近いうちに出版にこぎつけられる”という事を明かしました。
 この旅行の目的の一部が、ここで明らかになった訳です。<注3>
 その後、私はそれ以上のことを知りましたが……。


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