とうとう彼と会う夜がやってきました。大きな黒いリムジンで、豪華な本部に入っていきました。入り口はカメラのライトで昼間のように明るくなり、深くおじぎをしたままの側近や信奉者に囲まれて、池田夫妻が立っていました。
この予想もしなかった出迎えぶりに、私達は、目がくらみ、ドギモを抜かれました。
私達は、彼のもとに導かれ、小さな丸々と太った手と握手しました。そこに立っていた彼は、背の低い、太った男で、髪の毛は油で固められ、上等なスーツを着ていました。
フラッシュがたかれ、映画のカメラが近づき、私達は大勢の人々とともに、白いドレスを着た女性がおじぎをしている列の間を通り、とてつもなく大きな広間へと入って行きました。
その大広間には、大きな白いアームチェアーが並べられており、私達は、上座にある、王座のようなイスへと導かれました。
イスは私達夫妻に1席ずつ、そして池田氏に一つです。
池田氏は英語を話せないので、私達の後ろには、世界中どこへでも彼のお伴をする、若くて美しい通訳が座りました。
彼女はマイクの前に座り、私達の一言一言を全て、並んで座っている側近や信奉者達に聞き取れるようにしていました。
私達は、次から次へと繰り出される慇懃(いんぎん)な応対を受けながら、畏敬と驚きで、唖然(あぜん)としてしまいました。
池田氏は「今夜はお家にいるのと同じように、まったくリラックスした気持ちでいてください」とか「この特別な機会を楽しんでください」などと言いましたが、私達は、自宅でのくつろぎなどとは、まったく正反対の精神状態におかれていました。
私達は、約30分間、大衆の面前で、シャンパンをグラスの中で揺すり、スモークサーモンを食べながら、ロンドンと東京の天気について、また都市や風景についてなど、とにかくどうしようもないくらい、たわいのない会話をしました。
その間、広間に居並ぶ側近達は、厳粛にうなづくのでした。